たまには本音で…(3)

…さらに前回の続き(長いな!大論文やん…これで最後やから許して)

クラシック音楽界の興行形態の構造の問題点は、実はオーケストラだけでなくオペラでもバレエでも同じで(なにしろ、単体でも充分に問題のあるオーケストラを雇わないと、オペラもバレエも公演が出来ないのだから)、さらにはピアノ(ソロ=一人)でも集客に関して抱えている問題点は基本的に同じでしょう。

これは、私としては昔から言い続けて来ている事柄ですが、ともすれば仲間批判とも受け取られかねない事で、気のおけないごく少数の友人にしか話していません。しかし、もうそろそろプロとして携わっている音楽家達はこのことから目を背けてはいられないでしょう。プロ=職業として見るならば、音楽=ショーバイなのですから、売れない事をやっていても仕方がありません。演奏内容がどんなに芸術として優れたものであっても…です。公的な助成金に頼るのも現在の経済情勢から考えて現実的ではないでしょう。オペラもバレエもオーケストラも、もっと言えば公共のホール関係施設も、企画の基本が間違っている事になります。

前回書いたように、我々は、戦争中でもクラシックのコンサートがある国に生まれた訳ではないし、ホールが火事に遭った際にテント公演にでもお客さんが来てくれる訳ではありません。(震災で被害に遭ったミューザ川崎の川崎市と東響の関係はこうではなかったなあ)また、日本の場合は楽員側も「その環境でも演奏する」ことすらしないかもしれません。皆さん妙なプライドをお持ちですからね(笑)

だからこそ、我々はファンを獲得する努力をしなければなりません。ファン拡大の際に、我々の仲間がよく言うような「底辺を拡げる」(某指揮者らの発言)的な上から目線は言語道断だと思う。お客様に対して「底辺」なんてよく言うよなあ!かのM波先生がおっしゃっていた通り「お客様は神様です」…だからこそ、こちらもステージ上ではスターでいられるのです。また、「オーケストラはクラシックなんてやってる場合じゃない」と言って(私が本人から聞いた言葉)ポピュラー演奏にのみ走っちゃうBブS久間の考え方も間違ってる。

洋楽=クラシック音楽の分野では、浅草オペラは成功した例なのかなあ…でも今は残っていないし。宝塚歌劇だけが現存して興行的も成功していますねえ。カツ丼やアンパンみたいに「和と洋」がうまく組み合わさって新しい物が出来たという感じかな。しかし、本来オーケストラ業界は、そこを目指しているのではない。もちろんそれで喰えるのならとりあえずは良い事になるのですけどね。ショーバイとして成り立って、しかも自分達の本当に表現したいものに興味を持ってもらえるよう、売れるように考えなければ意味がない。

お客を呼べる、人気のあるオーケストラとはどんなものか?

まずは地元に根ざした活動…それぞれの活動している地元の人がファンとして定着してもらえるようにすること。地元に根ざした地元で愛されるオーケストラ。定期会員の皆様には、我が街のオーケストラの各奏者の名前くらいは知っておいて欲しいなあ。往年のチェコフィルの名Tuba奏者のホッザさんは「チェコフィルハーモニック・Tuba Hozza」と宛名に書けば自宅に郵便が届く(←格好良い!)…とおっしゃっていましたが、そのくらいにならなくっちゃ!会員が「私のオーケストラ」って自然に言えるような関係。

しかし、本当のターゲットは現在いるファン(例えば定期会員)ではない。今のお客の人数では足りないからこそ、公演が興行として成り立っていないのだから。会員サービスはもちろん大事だけど、今いるファンは放っておいても(←暴言!)クラシックが好きでしょうけど、今クラシックが好きではない・または興味がない人達にこそ、こちらを向いてもらえるようにする企画を考えなくてはならない。

まずは料金設定。先に書いた通り、オーケストラは普通に考えて収支を成り立たせることが難しい。しかし、現在の料金設定はどう考えても高過ぎる。SMAPでもAKBでも何でも良いのですが、ある人のファンが、その人と同じ会場の空気を共有したいと思って¥3,000払うのと、興味も持てない・なんとなく敷居が高くてつまらないと感じているものに¥3,000払うのは訳が違うのです。しかもクラシック公演は¥10,000円払わなければならない事も多い。オペラの値段が高過ぎる話も以前書きましたが、1席¥5,000の演奏会を夫婦で楽しんで、帰りに軽く食事をしたらそれだけで約¥2万円の出費です。家族4人だったら…なんぼかかるねんな!

しかも!オペラならS席¥50,000(海外からの劇場引越公演)なんてものまである。

ヨーロッパでは、日本円で¥500円程度からチケットがありました。もちろん天井桟敷ですが。平均したら¥1,500〜3,000円程度で充分に良い席で演奏会やオペラを楽しむことが出来ました。学生は500円で何度も同じ演目を聴いて(見て)勉強する事も出来ました。もちろん公的助成金が入っています。でも、政治や行政は、実際にどれくらい文化にお金を使っているか解りやすく(チケット1枚につき、幾らの助成金を税金から投入しています…的な)広告して、市民の理解を得るよう努力しています。

まずは、演奏会の金額を下げるべきです。自分達の収入が少々減っても、これは受け入れなければいけないでしょう。現在映画が¥1,800。それでも映画業界は値下げを模索し、カップル割引やシニア割引、曜日限定割引、東宝系列では一般¥1,500の値下げテストまでしています。クラシック音楽に対して興味のない人達に、最初の一歩を踏み出してもらうためには、こちらも薄利多売で、安い料金でたくさんのお客さんがまず会場に足を向けてくれるような努力が必要です。不況の際にかつての吉本が打った興行「十銭漫才」で客足を飛躍的に伸ばしたように(当時でも人気のあった漫才を安売りしたのです。クラシック音楽は今現在人気があるとは言えない→客足が飛躍的に伸びるかどうかすら未知数なのです)少なくとも映画よりは安くしないと…私の考えでは、ワンコイン¥500〜¥1,000程度から様子を見るべきだと思う。

また定期公演のリハーサルを無料公開するなど。(欧米では実際に行われているので不可能ではない筈)きちんと練習の邪魔をしないように事前の準備を徹底すれば良い。

お客が来れば、次は公演企画の見直し。クラシックは解らないからつまらないという言い方をされますが、音楽なのですから、解る前に感じて欲しい。どこが面白いかという切り口を考え直さなければならない。NH某の楽曲解説のように「これは、○×の心情を表現した△□なメロディーで、これに*※〜な要素を加えた極めて興味深い…うんぬんかんぬん」なんて聴かされたって、ただでさえつまらないと思われているのに、もっと聴きたくなくなっちゃうよ。私ならこんなことはぜ〜っタイしない!オーケストラに興味を持って貰う切り口はこんな感じ。

例えば…、

テレビの録画では絶対写らないところを見てもらう。休符で出番を待っている奏者や、ソロ直前の奏者の表情、ボレロでソロを演奏している時の同じ楽器の2ndプレーヤーの表情。指揮者の指示と指示された奏者との関係を裏読みする方法…などなど。音楽を聴きながら、ライブならではの面白さを感じる方法や見所は山ほどあるのです。それもプロならではの楽屋話をほんの少し織込みながら。こんなのは、まあ、ほんの一例ですけどね。

人は、スターのプライベートや現場の裏側をほんの少し覗きみたいものなのです。人気商売なのですから、エー格好ばかりするのではなく、少しは本当の顔も見せなくっちゃ。というよりは、ライブではそれが垣間見えるから面白い。もちろんジャズでもポピュラーでも、もちろんクラシックでも。もっと言えば、演劇でも落語でも同じですよね。

これまでにもやっているように、ポップスの演奏会や映画音楽の公演に加え、入門編の解説付きの演奏会を安価で、様々な面白い切り口でたくさんやれば、少しずつでも人気は出ると思うのです。聴きにさえ来て貰えれば、クラシックもオーケストラも「楽しんで」頂けるという事については、私は自信を持っています。人気が出れば定期公演にもお客さんは足を運んでくれる筈です。この時は本気でエー格好して全身全霊でクラシック音楽をお客にぶつければ良い。それはそれで、またお客の心に響くことでしょう。

近年、日本のオーケストラ界の演奏レベルはすごく上がった。しかし、良い演奏が提供出来るからといって、お客に対する気遣いがないのではいつまでたっても現状と変わらない、どころか衰退してしまう。クラシック音楽は「女子供の仕事」(←差別語かな??女性蔑視で言っている訳ではないよ!)に成り下がってしまう。自分の置かれている業界の状況が悪いと自分にも余裕が無くなる。余裕がないと仕事にも影響するという悪循環に陥る。

真面目にお付合い頂いた方々には申し訳ありませんでしたが、このように長い文章を書いてみたのは、自分の考えをまとめるためにも必要なことでした。

現代のように景気が悪化し、周りの環境が文化を大事にしなく(…「出来なく」というべきか。まあ、余裕のない時には、食うことに直接結びつかないものは切り捨てられるのは当然)なった時に、意外にも職業オーケストラとしては正しい方向に向くきっかけになるのではないかと思えるようになった。今こそ本来の「人気商売」「客商売」の原点に立って、クラシック音楽を「売れる商品」となるような企画を考える仲間が増えると良いのですけどね。

皆が努力して、お客がたくさんきたら、今度はそれを盾に取って、欧米並みに助成金を堂々と申請出来るシステムにならないかなあ…

次のブログは、元通り「お気楽」モードで書きます。

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