楽譜の近未来像

PCの発達のみならず、昨今はiPadなどのタブレット型端末が発達し素晴らしく高性能になったために、プレゼンテーションの形がどんどん変化しています。商品のサンプル(美容室での髪型とか、服の色、車の色などなど)を具体的に提示出来るようになりました。また、書籍の購読の方法が劇的に変わりました。今後は教科書などで大きな変化が考えられます。

さてさて、私のフィールドである楽譜の世界にも近い将来これが取り入れられるのでしょうか。いや、多分取り入れられるでしょうね。PCでの楽譜作成も、つい15〜20年くらい前には「とてもこんなものは実用に耐えない」と、私も馬鹿にしていましたから。(だってスコア印刷のコマンドを入力すると「まずシャワーでも浴びて心を平静にしましょう」という笑うに笑えないメッセージが現れるくらいだったのです。つまりはそれ位時間がかかったって事です)

教科書はWebSiteのように、関連づけられる様々な場所にリンクが張られ、知りたい場所から情報を得られるようになる事でしょう。まるで、何種類もの大きな百科事典が、一枚の手に持てる液晶タブレットの中にまとまってしまったかのように。

楽譜はどうなるでしょうね。A3程度の大きな液晶でないとスコアもパート譜も実用には耐えません。ヴァイオリンなどの弦楽器は2人で1つの楽譜を見ます。でも、電子楽譜になれば譜めくり(弦楽器の2人1組のうちの片方が、必要に応じて楽譜のページをめくる事)は不要になるでしょう。譜めくりの際に一瞬ではありますがそのパートの楽器の音量が半分になることはこれでなくなります。

重要な問題として書き込みがあります。指揮者の指示などを(公演ごとに毎回異なる)楽譜に書き込むのですが、スタイラスのようなもので手書きで入力する事は今の技術でも簡単でしょう。よく使う記号等は、あらかじめボタン配置で準備(ボーイング:弓順や音量の指示など)出来ますね。

またこの書き込みの保存と消去(特にボーイングでは、過去の演奏の際の記録が、その楽団の重要な財産となる事があります)が自由になり、過去の演奏の記録(指揮者ごとの記録など)が自由に呼び出され、さらにはその変更も自由になれば、ライブラリアンはすごく楽になるでしょう。

この書き込みが一瞬でシンクロして共有可能になり、プレーヤーの書き込みと指揮者の指示、スコア上の変更などが、指揮者・プレーヤーの双方向で自由に見られるようになれば、意思疎通に役立つでしょう。ある意味では…←これはちょっと意味深(笑)

また各パートで、必要に応じてスコアの表示が可能になれば、ポケットスコアを足許に置いていちいちページをめくるなんて事からも開放されそうです。

さらには、バックライト搭載で譜面灯は不要になり、オペラやバレエでピットに入って演奏する時も煩わしいケーブルから開放されそうです。譜面台と一体化しておけば、楽譜が落ちるという事故もなくなります。もちろんGP〜本番までの最大8時間程度の実用に耐えるだけのバッテリー充電容量が確保されている必要があります。

でもまあ、プロの世界ではなかなか実用にならないでしょうなあ。私だってこれを使いたいと切実には感じない。慣れるまでは仕事の効率が悪くなるに違いないのですから。でも、教育現場では、例えば学校の吹奏楽部などでは意外に早く実用化されるのではないかな?こういう事は開発費と販売数の関係でしょうから、売れる見込みがあればどこかで開発に着手するでしょう。Yマハあたりが飛びつきそう。そしてこれが当たり前になった世代がプロに入って来た頃には、我々の世界にもこれが入ってくるでしょう。

でも、情報がオープンになればなるほど、ちょっとしたプレーヤーの楽しみがなくなるなあ。アホな指揮者への悪口(まあ、上司へのちょっとした悪口程度だと思って下さい。時折ものすごいものもあるけど!)や、次にこの楽譜を使うであろう同じ楽器の奏者へのちょっとしたメッセージ(この次が難しいよ!とかね)、長いオペラでの休みに「ここから約20分は出番がないので、裏のカンティネで一杯飲れるぜ!」なんて悪戯書きがなくなるのは寂しいなあ。(カンティネというのは、諸外国の劇場には殆どある関係者用のバーのようなところ。もともとは軍隊の酒保の事で、出演者は舞台が跳ねるとここで一杯。社員食堂の様なもので一般の人は入れません)やっぱり我々の業界はデジタルではなくアナログの方が良い。

アナログで思いだしたのだけれど、白い紙やホワイトボードで五線を引きたい時の簡単な道具をどこかで売り出してくれないかなあ。特にホワイトボード用の水性ペンを5本束ねたような道具。簡単に出来そうなんだけれど、どこかの文房具メーカーで出さないかなあ?

「楽譜の近未来像」への2件のフィードバック

  1. やちまう 様
    情報ありがとうございました。なるほどね。修正テープ的なものか。インクをつけて五線を引くまるで竹箒のミニチュアようなペンは持っているのですが、今時インクをつけるペンなんて…どころか壷に入ったインクも手に入らない。この投稿のアイディアをどこかに売れないかね?

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