たまには本音で…(1)

本業について書こうかと思い…書き始めたものの、内容が重くなりなかなか筆が進まず(キーボードだけど)…ずっと下書きフォルダにあるこの文章が気になり…さりとて続きを書いてまとまりのある内容にもならず…ってな感じの今日この頃。

やっと少し考えがまとまり…でも長いで!読むんやったら相当の覚悟が要りまっせ!(笑)

日本中のオーケストラが助成金カットに苦しみ始めたのは何年前でしょう。東京都で言えば、石原慎太郎氏が知事になったとたんに、東京都交響楽団が都の管理下から離れ待遇面が大幅に悪くなり「小説家でもある知事が文化をないがしろにするとは!」という批判も上がりましたが、これは主に当事者からの批判で一般からはあまり注目もされず(←これこそが、問題の大元なのですけど)…確か、京都市響のプレイヤーの待遇が市職員から嘱託扱いになったのも同時期の筈です。東京フィルハーモニーと新星日響が合併したのも主にこの助成金問題が原因です。今後は大阪の橋下元知事→現市長と、彼の仲間である新知事で、大阪の文化行政が刷新され、大阪にあるいくつかのオーケストラの状況が悪化することでしょう。日本中の全てのオーケストラやホールの文化予算にあてはまる状況です。

そもそも、助成金に頼ってなんとか生計を立てている(またはそれでも赤字を増やし続けている)私の生きてきたこのオーケストラ業界とは一体なんなのでしょう。世界中どこの国でもオーケストラ(クラシック業界でもオペラハウスという言い方でも良い)は金喰い虫で、その公演収入のみで予算を賄っている団体は殆どありません。しかし、主に欧米では公的な助成金のシステム(税金の投入や企業からの寄付金に対する税の減免など)が確立されており、音楽文化をきちんとサポートしています。

これを見習って日本でも公的な助成金を導入し、オーケストラをサポートし始めたのですが、景気が上向きの時は良かったものの、バブル崩壊以降景気の悪化に伴いどんどん文化予算をカットする方向に向いているのが現状です。

基本的に、どのような分野でも既得権益が損なわれば文句が出るに決まっていますが、日本の演奏家が「欧米ではこうなのだから」という言い方で助成金を要求する事に対して、私は以前から異なった考え方を持っていました。行政と文化の関係性についての橋下氏の意見は(行政には文化を育てるという使命はない)概ね正しいと(私は)考えます。では、欧米ではなぜ税金の投入は正しく日本では違うと考えるのか?

基本的には人気の問題です。集客数という数字で端的に現れます。どんなに頑張って良い活動していようとも人気が無ければショウバイとして成り立たない。成り立たせる努力をしないでプロとは言えない。もっと厳しく言えば、成り立たなければプロとは言えない…のです。特に、歴史的にオペラやオーケストラが伝統文化ではない日本の場合はそういえます。SAMPやAKBと同じ土俵に立っている以上(これにも異論はあるとは思いますが、私はステージ上のパフォーマンスを買って頂いているという意味で、基本的に同じように考えるべきだと思っています)人気と収入の関係(要するに「売れる」ってことですね)は、厳然たる事実として捉えるべきです。

しかし、ここに少しだけ我々の側の論理があります。(甘えと言われても仕方ありませんが…)

例えば、SMAPが武道館に1万人集めて、入場料×10,000+CDや各種GOODSの売り上げを含めた総収入を、ステージ上の5名+スタッフ(仮に30名としましょうか)が均等に分けて皆の報酬とすると考えましょう。事はこんなに単純ではなく、もちろん均等割である訳ないのは言うまでもありません。まあ、解りやすく説明するためです。

チケットが¥3,000だとすると、それだけで一公演¥3000万円以上の売り上げがあり、アゴアシマクラ・ステージ上の美術、演出関連・ホール使用料・印刷代などの諸経費を引いても、ざっくり¥2,000万円以上の純益が出る。これを35名で均等割をすれば、1公演で一人あたり約¥57万円の報酬です。1回のツアーで日本全国10ヶ所を回れば、一人当たりの報酬は10日で570万円になります。公演のみの収入金額です。

では、オーケストラはどうでしょう。まず演奏会場のキャパシティーは大きいところでせいぜい2,000人。ステージ上の演奏者は例えば60名程度の中規模のオーケストラでも、スタッフを入れると総数で100名程度になります。オペラになれば、この数倍もの人数が必要ですが、会場のキャパシティーは変わりません。上記の入場料¥3,000を代入して、1公演一人当たりの報酬を計算してみて下さい。入場料を高くして分母を大きくせざるを得ないのです。さらに言えば、2000人を満員に出来ているか…という問題もあります。分母はさらに少なくなり、我々の報酬が…(笑、いやいや泣!)

この理屈が解っているからこそ、欧米では税金を投入するのです。しかも、彼らにとって「伝統芸能」でもあるオペラやオーケストラは、無くなると困るものなのです。そしてここが重要なことですが、オペラハウスでは、複数の演目を毎日公演をして、入場者は平均8割。つまり人気があるのです。ベルリンフィルは第二次大戦中でも(ナチスの庇護が有ったにせよ)公演を継続していました。ボンのホール(ベートーベンハレ)が火災に遭い、応急のテント張りになって風がバタバタと吹き込んでも、公演数は減らなかったそうです。つまりは「人気」が有るのです。必要とされているのです。しかも演奏者は集客の努力もしています。この「集客に対する努力」の部分を詳しく書くともっと長くなるので今回は割愛しますが、日本の演奏家はその努力をしているのか?客は定着しているのか?この部分が全く違っているからこそ、助成金を要求するのはおかしいと感じるのです。

欧米の市民は、わが町のオペラハウスやオーケストラに関心があります。私が実際にこの目で見聞きしたのは、ドイツの人口50万人程度の中規模の都市のオーケストラが、BクラスからAクラスに格上げされる計画が持ち上がった時のことです。格上げする事により編成も増え、予算の大幅な増額が不可欠でした。その時の新聞(ドイツには地方紙しかないのですけど)の一面が毎日この話題でした。市民が大きな関心を寄せている事の証明です。日本では絶対に考えられません。

…続く

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