いつまで暑いんだ!と怒っていたのに、急転して寒いなんて、今年の天気には「程」っちゅうもんはないんかい!「ちょうど良い」という言葉を教えてやりたい。秋はどうなるのでしょう・・。
そんな中、23日のC秋ちゃん誕生日にBすとろに行きました。毎年この日は予約をして楽しみにしています。今年はSいとうシェフの提案で、アイスバインを頂きました。もともと、私が、昔々(本当に昔やな!最近は外国に行ってない。それもなんだか・・・)ドイツに何度か行って勉強した事があるのですが、その頃の話をSいとうシェフのフランスでの修業時代の話と比べて、二人でよく喋っていた事がきっかけでした。ドイツはとにかく美味い物は無くて・・・ほとんど豚肉を茹でて塩味付けて食べるだけ、食事に生野菜が出て来ないのはイライラする、ザウアークラウト(キャベツの漬け物)の香料に最初馴染まなくて、でもだんだん好きになって・・・みたいな話です。同じヨーロッパで(人種こそ違え)隣同士だし、似たような料理は多いのに、なぜこうも味が違うのか? アルザスなんて、ドイツだったりフランスだったりしょっちゅう属性が変わって、ビールとソーセージの文化が、現在でも残っているのに、ストラスブール(今はフランス)の味は洗練されているのはなぜか? 等々・・。
会話の中で、シェフが「そのうち、一度アイスバインを作って食べさせます」と言ってくれていたのが、今回実現した訳です。
とにかく、仕込みに大変な時間がかかる筈です。豚のすね肉一本丸ごとを塩漬けします。アイス=塩漬け+バイン=足という意味ですから。
付け合わせは、必ずザウアークラウト(フランスではシュークルート)、これはキャベツを乳酸発酵させた漬け物ですが、これも時間がかかります。
手間ひまかかる仕込みを、我々のためにしてもらう事だけでも、シェフの気遣いをありがたく感じていたのです。
しかも、ドイツ風のワイルド!(何の下処理もしない感じ?)な茹で方ではなく、丁寧に下処理をして洗練された「フランス料理のアイスバイン」が出てきました。脂がまったくしつこくない!旨味だけが凝縮され、コラーゲン(!)でプルプルした、私にとっては、懐かしくもあり、また初めて食べる洗練された味でもありました。こんな味はSいとうさんしか作れないでしょう。いかにもSいとうさんらしい繊細な心遣いから「こういう料理は味が決まってしまい、食べ始めると飽きるから、時々これを挟んで下さい」と、生のトマトを刻んだ物を途中で出してくれました。こういうちょっとした気遣いがドイツ料理には無い所ですね。口の中がリセットされて、また新たな気持ちで美味しさが拡がります。
この日は、すべてお任せでシェフが料理を選んでくれて、ニシンのマリネが前菜に出ました。ニシンの酢漬けもドイツの定番料理なのですが、(以前も書きましたが)白ワインと合わせてもまったく生臭さがでません。ドレッシングのオイルの選び方が違うのでしょうか。どの前菜も隅々まで神経が行き届いています。
シェフの「腕」と「技」、その結果「味」が素晴らしいのはもちろんですが、シェフと(ソムリエでもある)奥様のK代子さんが、私たちを楽しませよう・喜ばせようという、思いやりが随所に感じられて、本当にに心地よい一夜を過ごす事が出来ました。
本当は、これを書いて良いのか迷ったのです。これを読んで「アイスバイン」の注文が入ったら、果たしてBすとろSいとう的には良い事か? 迷惑かも? いや、迷惑だろうなあ。迷惑に違いない! それに、私たちだけが特別扱い・・と不愉快に思う常連さんもいらっしゃるかも(Sいとうのお客さんは、皆おとなだからそんなことはないか!)でもなあ。・・・などなど。
でも、お二人のお客さんに対する心遣いは、特別注文の料理でなくても、いつでも同じように感じられるものです。また、何度か通って仲良くなれば、特注料理や味の好みの傾向など、相談に乗ってくれる事は間違いありません。
つまりは、人間関係の問題です。先日もこれに関連する記事を書きましたが、料理の「作り手と食べる側」、我々の商売でも「送り手と聴き手」、すべて同じです。お互いの心遣いが、心地よい空間と時間を作り出すのだと思います。
お店とお客の間のそういう関係こそが、BストロSいとうの求めるお店の姿なのだと思います。シェフは「食べる人の顔が見えないと、良い料理は作れない」ってよく話していますしね。
本当に感動的な、素敵な時間を過ごさせてもらいました。
追記:アイスバインの写真をbitroのページにある「料理写真ギャラリー」のコーナーに追加しますか?って訊いたら「・・いや、それはN田さんのブログの写真だけにして」って言われました。やっぱり書かない方が良かったかも・・。