すいぎょくオペラ

タイトルだけでお解りになる方は少ないでしょう。もう10年近く前でしょうか。私が主宰(?と言って良いと思う)していたオペラです。

実は、これの事を書くモードになってはいたのです。先日、Z・メータ指揮のフィレンツェ歌劇場「2011年来日公演」のチラシを見かけて(メータさんが痩せていて写真だけでは気付かなかった!まあ、年齢も重ねたんでしょうけど。イスラエルフィルの来日公演の際に少しだけご一緒したのですが、その時はメータよりオーケストラのポテンシャルにビックリして心を奪われていました)そのチケット料金がS席:¥52,000というのに腹を立てた。

これ、あかんでしょ?

いやいや・・、日本では仕方の無い事なのかもしれないのです。でも、あかんのです。説明が必要ですね。日本の興行主は我々の仲間=つまりプロです。プロはこの業界の展望を考えて仕事をしなければならない。それがこの値段?

欧米、特にヨーロッパでは劇場は殆どが公営(国・州・市など)です。つまり税金が使われています。(アメリカは少し事情が違いますが・・)そして市民は劇場=文化・芸術に税金を使う事を認めています。

もちろん、これを継続するためには、演奏者側もお客さんを楽しませるよう努力をし、お客さんも彼らを盛り立てるべく、ファンになって応援する=つまりは足を運ぶのです。

税金の補助があるので、劇場の料金はとても安く、一番高くても日本円に換算して3〜5000円くらいです。私がいた頃は300円から観る事が出来ました。学生も勉強のためにいくらでも観られますし、好きな方は何度も同じ演目に足を運びます。芝居でも映画でも二度三度と回数を重ねると理解度が深まる事は皆さん経験おありではないでしょうか?つまり、舞台がどんどん楽しく、身近になります。

街の大きさや規模の違いもあります。公演の時間設定も違い、夕食を済ませてから劇場に出かけるという事もあります。もともとオペラやオーケストラを楽しむ土壌がありました。テレビと人との関係が日本とは違い、家族や夫婦で生活を楽しむ方法がそもそも違います。演奏されているのは彼らの民謡から発展したとも言える、なじみ深いものではあります。(・・が、前にも書いた敷居の高いクラシック音楽でもあります)

日本では、基本が違うので、形だけ真似てもうまくいきません。(これを勘違いして、自分の事は棚に上げて権利だけを主張し、欧米はこうなのだから日本も同様にしろ・・的な論法で自分の利益の方向に論を進める音楽家がいるのも腹立たしく悲しい事です。でも、これについて論じるともっと長くなる上に、身内を攻撃し始めるので別の機会に・・)

長くなりましたが、つまり、日本ではこういった海外からの公演は高く(かかった経費は観客負担に)せざるを得ない。だから、お金のかかるオペラやバレエの公演は、演奏者が日本人の場合でも高いのです。

でも、やはりこれではいけない。これでお客が入る分には=入りはしないんだけど、特に最近は不況のせいで企業がまとめて購入という形がなくなり、本番が近くなると、座席を埋めるためにディスカウントなどけっこう苦労してはりますなあ=少なくとも購入して頂ける方には(それだけの経済力をお持ちなのですから)こちらがとやかくいう事ではありませんが。

でも、これではいつまでたってもお客は増えない=業界は発展しない。初めて見る人に興味を持って貰うためには、料金設定を工夫しなければ。以前も書きましたが、SMAPと同じ土俵に立つなら、人気が出るまでは彼らより高い料金ではお客は来ない。映画でも、1,700円の料金を月に1回1,000円のサービスデーを設けているのなら、それより安くしなければ。別に自らを卑下している訳ではないのです。ステージ上で「パフォーマンスをしてギャラを頂く」という立場から見て公平に考えれば、お客さんの人気がギャラに反映するのは当然なのです。売れたら=人気が出たら、いくらでも高くすれば良い。そして、日本のクラシック業界は、まだまだ、その中の個人が売れる(←ことも必要でしょうけど)より、業界全体の認知度と人気度を上げるよう、皆が努力しなければいけない程度の未成熟な状態です。

NHKが文化を大事に・・なんてエラそうにホザイてますが、その実クラシックや落語・文楽などの文化関連の放送時間はたいてい深夜か早朝です。たまにBSや教育テレビではなく、NHK第一での放送だと、日曜の朝5:00〜とか。日本人が一番寝ている時間帯でっせ!どこが文化を大事にしとんねん!!←でも、未成熟だから、仕方が無いのかも・・とも思う。

なんだか、書いていたら収拾がつかなくなった。続きは「すいぎょくオペラ2」を近日中に。

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